2012年製造のVAIO SVl241A11N のCPUファンから異音がするので修理をして欲しいとの依頼がありました。

お客様の依頼に至るまでの経過です。抜粋。

……..まずメーカ(SONY)に修理対応可能かを問い合わせ。
結果>>保守期間切 れ?か何かで対応不可。
購入店(ヤマダ電機)に問い合わせ。
結果>>修理持ち込み。結局メーカーに送った様で上記 と同じ結果。
パソコン工房に問い合わせ。
結果>>部品の調達が出来ない為、清掃のみ対応可能と 回答。…………….

おそらく、冷却ユニット本体はないという意味で、CPUファンまでは交換対象になっていないのでしょう。アッセンブリー(組み立て部品)扱いなので保守期間を過ぎた場合は在庫があれば対応するが、なければ対応不可となります。

さっそく、パーツを業者((有)リフレわかやま様)より、仕入れました。確実にパーツを見つけ出すために、PC型番だけでなく、現物の画像とCPUファンや付属する冷却ユニットの型番が必要でした。
その旨をお客様に伝えて、分解の許可をいただき、本体を志義どっとPCに持ち込んでもらいました。

【冷却ユニット】分解して冷却ユニットを取り外しました。ヒートシンクは、CPU用と〈ブラビア〉の高画質エンジンX-Realityボードにわかれています。しかし、CPUファンは、これらのヒートシンクと兼用でした。CPUはインテル Core i7-3630QM プロセッサー(2.40GHz)なので、これで十分に冷却できるのかちょっと怖いのですが。(後で、OCCTとCPU-Zで負荷テストしてみました。少し、高温気味?)

これらの写真と、型番を送り、待つこと約10日間。パーツが到着しました。冷却ユニット本体はみつからず、CPUファンのみが入手可能でした。上が新(交換用)、下が旧(交換前)のCPUファンです。見た目には、交換前の方が羽の部分に汚れが付着している程度で、エアーダスターで吹いても、異音もなくスムーズに回転していました。ただし、高速回転すると異音が発生するのかもしれませんが、それは確かめていません。

【分解】

自己責任:分解の手順を載せました。この通りにやって、分解できなかったり、不都合が起きたりしても責任は負えませんのでご了承ください。この記事を読んで分解のイメージがつかめる方はおそらく大丈夫だと思います。全く初めての方は、念の為にジャンクパソコンを入手したり、家庭で不要になった電気器具をいくつか分解してどのくらい力を加えると傷がつくのかや割れるのかなどを試してみることをお薦めします。さらに、分解したものを組み立ててきちんと元の状態に戻るかも確かめておきます。接触不良が不具合の原因だった場合は、組み立てたことで接触が復活し、正常に動作するようなるものもたまにあります。

<ツール>

  1. ネジの形状に合わせたドライバー
  2. 不要になったクレジットカード
  3. ネジ入れケース(不要になったアイスのカップなど)
  4. デジカメ(記録用。今は、スマホカメラ。)

1.のドライバーは、大・中・小のどこにでもある普通のドライバーです。
2.の不要になったクレジットカードは、筐体を分解するとき、爪で噛み合っている部分に差し込んで筐体のカバー部分や、液晶部のフロントベゼルなどの分離に使います。クレジットカードも筐体もプラスチックなので、少し力を加え過ぎて、手がすべっても、傷がつくことはありません。(絶対ではありませんが、リスクはかなり低いです。)しかし、マイナスドライバ(金属製)などを筐体の隙間に入れて、こねたりすると、まず、まちがないなく傷が残ります。最悪の場合、割れたりします。

今回は、パソコン本体を分解するので、あまり発生することはないと思いますが、事前に、分解するときにリスクとして、爪が折れることについて、お客様に確認と了承を得ておきます。
特に、外付け2.5インチHDDの筐体を分解するときには、ほぼ1,2個は爪が折れます。理由は、パソコン本体に比べると爪の強度がかなり弱く、ペラペラに近いものがあるからです。もちろん、古いものであれば経年劣化(ハードディスクの熱)による爪の老朽化があることは、お客様に伝えておくべきです。

3.のネジ入れケース(図6-2)は、ネジを整理するために使います。分解したパーツごとや分解した順番にケースに入れて保管します。特にネジの大きさが異なる場合などは、取り付けられていた位置がわかるように紙に書いてその紙をケースの中に入れておきます。もちろん、写真もきちんと撮っておきます。

では、分解してみます。ざっと3つの段階があります。

  1. 筐体のネジを外す。
  2. 筐体の上部・下部を分離する。
  3. 本体内部の各パーツを取り外す。

1.筐体のネジを外す。

(1) スタンドカバーを外す。(写真撮り忘れ)

隙間に手を入れて、少し力を入れて持ち上げるようにすると、簡単に外れます。

(2) スタンドを外す。

赤丸部分のネジ7本を外すと、スタントドが外れます。

(3) ハードディスクを外す。

実際には両サイドのネジがハードディスクを固定しているネジです。真ん中のネジは、黒いカバー(筐体)部分とハードディスクマウンターを固定するネジです。
更に、メモリ(青丸)とケーブル類(2種)(緑丸)を外します。図8の緑丸と図8-2の緑丸は同じケーブルです。

別件:このとき、図8-1に示したように、赤丸内のケーブルが損傷していました。ブルーレイディスクドライブの電源ケーブルの1本です。被膜が破れ、中の導線が見えています。断線しているわけではないのですが、このままではいつ切れるかわかりません。ビニールテームで補修し、その上からホットボンドで固定しました。力が加わる部分ではないのできちんと固定さえしておけば大丈夫です。事前にお客様に、画像をお見せして、対処方法を伝えておきました。分解にはリスクがあることを再確認してさらに作業を進めました。

(4) 本体最下部(スピーカー部分)のネジを外す。

本体最下部の両サイドに1本ずつ、計2本あります。

ネジの取り外しはここまでです。このあとは、クレジットカードが大活躍します。

2.筐体の上部・下部を分離する。

1の(4)でできた隙間に、クレジットカードを斜め上(または下)から差し込んで、クレジットカードをグッと下に押します。てこの原理で力が増幅され、差し込んだ部分の黒いカバーが少し浮き上がります。そのようにして、爪がパチッと音を立てて外れるのを確認しながら筐体のカバーを分離していきます。

ここで注意:クレジットカードを差し込んで、上下(今回は下)に力を少し加えるとパチっと音がして爪が外れるときと、力を加えてもなかなかすぐには外れないときがあります。このようなときは、無理をせず、クレジットカードを差し込んで力を加えたまましばらく待ちます。はさみっぱなしにして5分位放置しておくと、力をあまり加えなくてもパチっと爪が外れることがあります。プラスチックなのでゆっくりと力を加えてやるか時間を掛けて力を加えると変形しやすくなるようです。焦ってはダメです。じっくり時間を掛けて爪を外します。

3.本体内部の各パーツを取り外す。

冷却ユニット部分は、まだ金属製のカバー、図11の赤枠内に隠れています。分解の写真は撮り忘れました。ネジは3種類あり、全部で十数本ありました。幸いなことにネジ部分には、すべて金属製のカバーに矢印(⇒)が刻印されているのでとてもわかりやすいです。ただし、2ヶ所の青丸の中にもネジがあるので、布製のカバーをはぐって、ネジを外します。矢印も刻印されています。ネジをすべて外せば、簡単に金属製のカバーは外せます。

冷却ユニットは、CPUファン、CPUヒートシンク、X-Realityボード用ヒートシンクの3ヶ所にそれぞれネジ止めされているので、それらのネジを外します。冷却ユニットは、かんたんに外れます。

以上で、冷却ユニットまでの分解は完了です。さらに分解される場合は、分解部分の写真を撮り忘れないようにして、慎重に進めてください。決して無理をしたり、焦って事を進めてはいけません。

なお、組み立ては、分解の逆なので簡単です。ただ、最後にカバーをはめるとき少しだけ、側面を親指の腹で押してあげるとパチっと音がして爪がはまります。

【動作確認】

<組み立て>

CPUヒートシンクには、シルバーグリス(図13-1,2)を、X-Realityボード用ヒートシンクには、放熱シート(3M ハイパーソフト放熱シート 5580H-20 100mm x 100mm x 2.0mm厚)(図13-3)を使い、組み上げました。

組み上げた後、CPU-ZとOCCTでCPUに負荷(CPU使用率100%)をかけ、1時間動作テストをしてみました。ファン自体の回転音とときどき一定間隔でシャァー、シャァ−、シャァーという風切音が耳をすますと聴こえます。このシャァー音が異常かどうかは判断できません。もちろん、CPUの負荷テストを止めれば、ファン自体の回転音も聴こえないくらい静かになってしまいます。CPUの温度は、負荷テスト中は最高94℃まで上がりました。ちょっと気になる温度ですが、すぐに80℃台に戻るので、まぁよしとしました。

お客様には、これでしばらく様子を見ていただくように伝えて納品となりました。